総角(あげまき)いろいろ

総角いろいろ 和歌あれこれ

簾などの飾り

「総角結び」という紐の結び方があるよ

結い方の一例を以下に載せます。
・必要なもの  50cm位の紐(紐の中央に輪ゴムなど結び付けておくと見当が付けやすい)

簾を巻き上げたときに止める金具を隠すためとか、引き出しの取っ手の飾りとか、いろいろと使われていたようですね。 同じ結い方を西洋では“セーラーズクロス”と呼びます。

和歌

「総角」という言葉が使われている和歌や歌があるよ

源氏物語『総角』巻で、薫中納言が想い人たる大君に贈った和歌です。

総角に長き契りを結びこめ おなじ所によりもあはなむ
(紐が縒りあう総角結びのように、あなたと寄りそって過ごしたい…)

あげまきに ながきちぎりを むすびこめ おなじところに よりもあはなむ

また、平安時代の民謡の一種である催馬楽には「総角」という唄があります。
「総角や とうとう 尋ばかりや とうとう 離りて寝たれども まろびあひけり とうとう か寄りあひけり とうとう」(離れて寝てたけどお互い寝返り打ったら添い寝になっちゃった)。
薫の和歌は、この催馬楽を下敷きにして詠まれています。

髪型

むかし「総角」という髪型もあったみたいだけど…

岩波古語辞典』の「みづら」の項1には、「上代、男子の成年に達した者が髪を頭上中央から左右に分け、それぞれ束ねて両耳の辺りにわがねたもの。髪をあげて巻くので「あげまき」とも」と書かれています。項2には「平安時代以降、少年の髪の形」とあります。 一方「あげまき」の項では「髪の結い方の一。(中略)頭上の左右にあげて巻き、輪を作ったもの」とし、日本書紀の「古の俗(中略)十七八の間は分けてあげまきにす」を引いています。うーん、角髪(みづら)と総角の違いはなんでしょうね?

漢詩

日本の「総角」と同じ髪型を詠んだ漢詩もあるよ

中国では、日本の総角と同じ髪型を‘Y頭’(あとう)と呼びました。
『歳晩書事(歳晩 事を書す)』 劉 克荘『漢詩歳時記 冬

日日抄書懶出門  (日日 書を抄して 門を出づるに懶(ものう)し)
小窗弄筆到黄昏  (小窓 筆を弄して 黄昏(こうこん)に到る)
Y頭婢子忙匀   (Y頭の婢子 粉(おしろい)を匀(ととの)うるに忙しうして)
不管先生硯水   (先生の硯水の渾(にご)れるを管せず)

訳:毎日、文書を写す事の繰り返しで、外出も億劫だ
小窓のもとでのそんな筆すさびは黄昏時にまで到る
総角頭のお女中達はお化粧を整えるのに忙しくて、
わたしの硯の水が濁っているのさえ、気にもとめない

字の形から、頭の上部にツノのように2本突き出た髪型のようですね。

揚巻

あげまきといえばこちら、歌舞伎に登場する「揚巻」のほうが有名かも⁈

助六由縁江戸桜』に登場する花魁。

揚巻
東京都墨田区「江戸東京博物館」にて撮影(’06.05.04)

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