白露も夢もこの世もまぼろしも
和泉式部が「露ばかりあひそめたる男のもとへ」おくった歌。

白露も夢もこの世もまぼろしもたとへていへば 久しかりけり(和泉式部・後拾遺集)
しらつゆも ゆめもこのよも まぼろしも たとへていへば ひさしかりけり

「白露、夢、現世、幻。
そんな儚いものでさえ、あなたと逢っているときの短さに較べたら長いものです」

こんな歌をおくられたらすぐにでも飛んで行きたくなるでしょうね。
和泉式部の恋のお相手としては、為尊親王と敦道親王のご兄弟が有名ですが、果たして誰に宛てた歌なのでしょう。畳みかけるような調子で、激しい恋情を訴えかけています。

ところで後撰集中に、「人心たとへて見れば白露の消ゆる間もなほ久しかりけり(1263)」(あなたの変わりやすい心に較べたら、白露が消えるまでの間だって長く思えます)という和歌があります。和泉式部はたぶんこれを本歌取りしたのでしょう。この後撰集の和歌は、のんびりとした、まるで他人事のような調子で詠まれています。一方の式部の和歌には、必要最小限の言葉―切り詰めすぎて言葉足らずにさえなっている―でいわば問答無用に斬りかかるような、切実さがあります。

('00.10.03/'08.01.28に絵のみ差替)

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