ひさかたの光のどけき春の日に
桜は散るゆえに美しい、とはどなたの言葉でしたか…。

桜の花のちるをよめる
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(紀友則・古今集84)
ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ

「おだやかな春の光の中で、ひらひら花は散り急ぐ」

この歌は、百人一首に選ばれていることもあってか、友則の代表歌と見なされているようです。古今集を代表する春の歌と言われたりもします。じっさい大らかで濁りのない、平安時代の空気を象徴するような歌だと思います。

教科書とか辞書とか、たいていの本は‘なぜ’という言葉を補って訳しています。「らむ」という助動詞を、現前の事態を‘なんでだろう’と推量する意味としてとらえるからです(「らむ」の語法には同様の例が(「恋の和歌」秋風に…など)認められる)。また、「しづ心」ないのは桜の花である、つまり擬人法的表現であると見なしています。そうすることで‘春の日はのどかなのに、花はなぜせわしなく散るのだろうか’というように「のどけき」と「静心」とがきれいに対比した訳になります。

('01.04.18ページ作成/'06.03.14に絵を差替)

春の絵1 < 歌絵 > 春の絵3