「総角」より

秋八月。源氏の異母弟、八宮の一周忌法要が近づいた。
これまで、何かと八宮の姫である大君中君の世話を焼いてきた薫中納言は、法要の準備もかねて挨拶に訪れた。
簾の向かふでは、姫君たちが仏前に供へるお香の飾り糸を縒つてゐるやうだ。
薫中納言は、供養の願文を書くついでに、
総角に長き契りを結びこめ おなじ所によりもあはなむ索引
(縒り合つて結び合ふ総角結びのやうに、あなたと寄りそつて過ごしたいものだ)
と書いて大君に見せる。大君は、またそんなことをと煩はしく思ふのだつた。

総角に長き契りを結びこめ

平安時代の民謡の一種である催馬楽には「総角」といふ唄があります。「総角や とうとう 尋ばかりや とうとう 離りて寝たれども まろびあひけり とうとう か寄りあひけり とうとう」。薫の和歌は、この催馬楽を下敷きにして詠まれてゐます。

('07.12.21)

源氏物語の絵3 < 歌絵 > 源氏物語の絵5