「花宴」より

二月二十日余りの朧な月夜、源氏は政敵である右大臣家の姫と密かに通じます。
右大臣家に未婚の姫は二人。そのどちらと契ったのか、知るすべもありません。
約一月後の藤の咲く頃、源氏は右大臣家の弓の試合に招かれます。
夕暮に姿を見せた源氏の美しさは、満座を魅了しました。
やがて酔いを口実に席を立った彼は、邸の寝殿で女君たちに声をかけ、
ついにかの朧月夜の君を見つけます―

あづさ弓いるさの山にまどふかな

源氏、几帳越しに女の手をとらえ、
あづさ弓いるさの山にまどふかなほの見し月の影や見ゆると
あづさゆみ いるさのやまに まどふかな ほのみしつきの かげやみゆると
(今日の弓の結に誘われ、ふらふら迷い込んでしまった…
あの弓張月の夜のあなたに、また逢えるのではないかと思って…)
誰ゆえ惑うとお思いか、と。

堪えきれずに
心いる方ならませば弓張りのつきなき空に迷はましやは
こころいる かたならませば ゆみはりの つきなきそらに まよはましやは
(本当に気に掛けておいでなら、弓張月も無く、
逢うすべもなくても、迷う事はありませんでしょう?)
と言う声は、まさにあの時の姫で―。

('02.01.21/'03.02.17に絵の色を塗替)

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