神なびの三室の山を秋ゆけば
秋も終わりの和歌です。

神なびの三室の山を秋ゆけば錦たちきる心地こそすれ(壬生忠岑・古今集296)
かむなびの みむろのやまを あきゆけば にしきたちきる ここちこそすれ

「秋、紅葉の三室山を行くと、錦を裁ち着るような気分です」

この和歌では、‘もみぢ’という語を用いずとも、‘錦たちきる’という喩えによって燃えるような紅葉が鮮やかに表現されています。さて、「神無備」も「三室」も、もともとは神のいますところを意味する普通名詞でしたが、おなじ古今集の「 竜田川もみぢ葉流る神無備の三室の山に時雨降るらし(古今集284)」 (竜田川に紅葉が流れている…三室山に時雨が降っているからだろうな)などの歌が有名になり、やがて固有名詞化したそうです。

「錦」は、和歌では紅葉の喩えとして用いることが多いものの、なかにはこんな歌もあります。
見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける(素性法師・古今集56)」 (見渡せば、柳と桜をしごき取り混ぜて織った「春の錦」のような都の景色だ)。

どの歌にしろ、色とりどりの美しい景色が思い浮かびます。

('00.12.01/'04.11.19に絵を塗替)

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