秋風に大和へ越ゆる雁がねは
秋風が吹き始める頃の和歌です。

秋風に大和へ越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ(万葉集2132)
あきかぜに やまとへこゆる かりがねは いやとほざかる くもがくりつつ

「秋風に乗って大和へ向かう雁は
雲間に見え隠れしつつ、鳴きながら遠ざかる」

この歌から勝手に想像を膨らませたのが、上の絵と下の擬古文体です。自分でも何が何やらさっぱり??なのでどうか笑い飛ばして下さい。

むかし男、幼き日を過ごせる大和より、役を得て都に罷り越す。
望郷の念はおさへがたく、一人山に登り夕空を見上げて詠める、
秋風に大和へ越ゆる雁がねは いや遠ざかる雲隠りつつ
覚えず涙こぼるる心地してうつぶく。「初雁の使ひにも」などとひとりごちたるとや。

「雁の使ひ*」は、物語っぽく見せるねらいで引歌してみました。
 なが月のその初雁の使にも思ふ心は聞こえ来ぬかも(万葉集1618)
 ながつきの そのはつかりの つかひにも おもふこころは きこえこぬかも
(九月、雁が嬉しい知らせを持ってきてくれると思っていましたが…)
*匈奴に囚われた蘇武が、雁の足に手紙を結びつけて都に知らせたという故事によります(出典は『漢書』蘇武伝)。

歌を詠んだあと絶対うつむいたはず! なんて根拠もないのに思ってしまったのは、私の頭の中が李白の漢詩『静夜思』に影響されていたからかもしれません。ということで、あまり関係ないのですが引用します。訳はいいかげんです。

床前看月光 床前月光を看る
疑是地上霜 疑うらくは是れ地上の霜
挙頭望山月 頭(こうべ)を挙げて山月を望み
低頭思故郷 頭を低(たれ)て故郷を思う (『漢詩の名句・名吟』より)

寝覚めの床の月影は、あたかも霜の降るようで。
遠く望める山月に、故郷思いうなだれる。

('00.08.11ページ作成/'05.10.05に絵のみ差替)

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