「その昔
賀茂の山に旅寝して
ほととぎすがそっと語りかけてきた空のいろを
忘れはしません」
「この歌は大岡信さんが折々の歌で絶賛されていたのを契機に知りました。加茂の斎院時代を思い出して、だそうです。上の句の語法が漠然としていて、はっきりと何を言いたいか、わかりにくいのですが、それでもその思いは十二分に伝わってきます。上の句のすがすがしい空気と下の句の余韻残る言い回しが大好きです。」…和歌にお詳しいういろうさんならではの的確な語釈と鑑賞コメントを、本当に有難うございます。じつは私も大岡信さんの著作(『名句 歌ごよみ「夏」』)でこの歌に出会いました。時間的広がりのあるみずみずしい感性に彩られた当歌は、ほととぎすを詠んだ数多の和歌の中でも出色の作ではないでしょうか。