うたた寝に恋しき人を見てしより
うたた寝に恋しき人を見てしより 夢てふものは頼みそめてき
うたたねに こひしきひとを みてしより ゆめてふものは たのみそめてき

「うたた寝で
恋しいあの人を
見てしまってからは
夢なんて儚いものにも
期待するようになりました」

昔、夢に誰かが出てくるのは、その人が好いていてくれるからと考えられていました。 小町も、好きな相手が自分を好きだから夢に出てきたのだと解釈し、夢を頼もしく思うようになったのかもしれません。

古今集の巻第十二(恋歌二)の巻頭には、小町の詠んだ「夢」の和歌がこの歌を含め三首並んでいます
(「思ひつつぬればや人の見えつらむ 夢と知りせばさめざらましを
「うたた寝に恋しき人を見てしより 夢てふものは頼みそめてき」
「いとせめて恋しきときは むばたまの夜の衣をかへしてぞ着る」)。
 また、同じ古今集の恋歌三にも、
(「うつつにはさもこそあらめ 夢にさへ人めをもると見るがわびしさ」
「かぎりなき思ひのままに夜も来む 夢路をさへに人はとがめじ」
夢路には足もやすめず通へども うつつにひとめ見しごとはあらず」)
三首続けて小町の夢の和歌が収録されています。

―前の歌群が恋のはじめの一方通行的な夢なら、後の歌群は恋の只中でお互い心が通いあう夢―。 ふたつの歌群は、同じ「夢」というものを題材としていても、だいぶその性質を異にしているようです。

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